腕時計のバンドは、素材に関わらず劣化が進んでいきます。
革は汗などの水分でボロボロになり、金属は汚れがたまってサビも出てきます。バンドは思った以上に時計のイメージを担っているので、劣化がひどいと見た目も悪い印象になります。そのため、定期的にバンド交換する必要があるのです。
この記事では、腕時計のバンドを自分で外す際の、道具の使い方や取り付け方までを解説していきます。
最後まで読んでいただけると、以下のようなメリットがあります。
・バンド交換の方法が分かる
・使用する道具と使い方がわかる
・自分で交換できない場合の対処法もわかる
快適な使用とデザイン性を保つためにも、ぜひ本記事を参考にバンド交換を実施してください。
時計バンドの交換は自分でもできる
腕時計のバンド交換は、専用の道具と手順さえわかれば自分でもできます。
プロが使用する専用の道具は、通販などで簡単に手に入りますし、バンドの外し方もそこまで高度な技術を必要としません。ただし、ケース部分を傷つけないよう、慎重に作業を進めなければいけません。
バンド交換できるようになれば、バンドを変えたくなった時に自分の好きなタイミングで作業できます。もちろんプロに任せたほうが安心ではありますが、決して自分で行ってはいけない作業ではないのです。
バンド交換に使用する道具
バンド交換を適切に行うためには、専用の道具が必要です。
いくら手順を把握していても、専用の道具を使用しなければ、ケースの傷やパーツの紛失にもつながりかねません。そのリスクを少しでも減らすために、プロでも使用するような専用の道具をまず揃える必要があります。とはいえ、購入しなければいけないものはそれほど多くはありません。
バネ棒外し
バンドの着脱をするための専用工具です。先端部がそれぞれ異なった形状になっていて、先が割れた「二股」と、割れてない「棒状」となっています。
それぞれの役割は、「ラグ」の外側に挿し込み口があるかないかで決まります。ラグというのは、腕時計のケースとバンドをつなげるための接合部分のことです。ラグには外側に挿し込み口があるタイプと無いタイプがあり、挿し込み口があるものは「棒状」で、無いタイプは「二股」を使用してバンドを外せます。
バネ棒外しは、バンド交換において最も基本的な道具といえます。
両つかみ式バネ棒外し
バネ棒外しで作業に不安があるようなら、「両つかみ式バネ棒外し」がオススメです。
「二股」が両サイドに設置されており、挟むようにつかむことでバネ棒を外せます。楽に作業ができるうえに、ラグを傷つけるリスクも減ります。バネ棒外しならある程度の作業工程がありますが、両つかみ式バネ棒外しなら一度の作業で安全かつ簡単に外せます。
クロス
クロスは、バンドやバネ棒の汚れを拭き取るために必要な道具です。素材は2種類あり、それぞれ特性があります。
<マイクロファイバー>
・極細繊維で時計への負担が少なく、手軽で使いやすい。
<セーム革>
・シカの革で出来たクロス。油を吸いやすく、クロス自体が水洗いできるので、清潔に使用できる。
バネ棒を汚れたまま使用すると劣化が進み、折れてバンドが取れたり、固着してバンドが外せなくなります。バネ棒は普段のメンテナンスが一切できないため、取り外しの際にクロスで汚れを取りましょう。
セロテープ
セロテープは、マスキングとして使用します。
バネ棒やバネ棒外しの先端は金属なので、スベってラグを傷つける恐れがあります。バンドを外す前にラグにセロテープを張り付けることで、傷の防止になるのです。非常に手軽にできるので、おすすめの方法です。
時計バンドを外す前の確認事項3選
バンド交換する前に、押さえておくべきポイントがあります。もしここを確認しなければ、交換しても満足いかなかったり、そもそも交換できないという事態になります。
①尾錠の色
②バンドのサイズ
③バネ棒のサビ
以上の3点について解説していきますので、滞りなく作業ができるよう参考にしてください。
①尾錠の色
バンドの尾錠とケースの色は、合わせたほうが良いでしょう。
尾錠というのは、腕時計の装着時にバンドを結合させるための部品です。バンドの12時側の先端にあり、金属バンド以外についています。尾錠とケースの色がちぐはぐだと、見た目もアンバランスになります。そのため、基本的に全ての腕時計は尾錠とケースの色が統一されているのです。
「ゴールド」なら「ゴールド」に、「シルバー」なら「シルバー」と、取り付けるバンドの尾錠の色をまずは確認するようにしてください。
②バンドのサイズ
バンドのサイズは、あらかじめ確認しなければいけません。もしサイズを確認せずにデザインだけで購入したら、交換時に問題が発生します。
もともと付いているバンドのサイズが「20㎜」だとします。「21㎜」のバンドだと、大きいので取り付けできません。逆に「19㎜」だと取り付けは出来ますが、ラグの幅と比べて「1㎜」のスキマができてグラグラと動いてしまい、見た目も悪くなります。
ケースに取り付けるので、ラグのサイズがそのままバンドのサイズとなります。ラグをモノサシかメジャーで測るか、革バンドの場合は裏側にサイズが記載しているので確認してみましょう。
③バネ棒のサビ
バネ棒がサビてないかも重要なポイントです。
腕時計を着用していると、どうしても汗が付着してしまいます。バンドはまだしも、バネ棒は取り外しをしない限り拭き取れないので、長期間経過するとサビにつながるのです。サビてしまうとバネ棒自体が固着して、外せないという不具合が発生します。
まずはバネ棒にサビがないか確認し、なおかつ少しバネ棒外しで少し触ってみましょう。固い場合は、ムリせずプロに依頼してください。
時計バンドの外し方【革バンド】
バンドの外し方ですが、「革バンド」と「金属バンド」では少し形状が違うので、外し方も変わります。まずは、革バンドの外し方から解説していきます。
革バンドはその素材上、汗などの水分に弱く、使用頻度が高いとどうしてもボロボロになってしまいます。金属バンドと比べて取り換える機会は多くなりますが、専用の道具と外し方さえわかれば問題ありません。スポーツウォッチによく使用される樹脂製の「ウレタンバンド」も、同様の方法で外すことができます。
まず抑えるべきポイントとしては、ラグの外側に挿し込み口があるかないかを確認しましょう。それにより外し方が変わりますので、それぞれを解説していきます。
革バンドの外し方【挿し込み口あり】
①作業中にバネ棒が飛び出して傷つけないよう、ラグにセロテープを貼ってマスキングしましょう。
②腕時計が安定するように、リューズを上にしてください。
③ラグの外側の挿し込み口に、バネ棒外しの棒状部分をゆっくりと差し込んでください。
④バネ棒が押し上げられて内側の穴から外れたら、バンドを横にずらしてラグから外してください。
挿し込み口がある場合は、バネ棒外しの「棒状」を使用します。基本的には、挿し込んでズラすだけなので簡単にできます。バネ棒をズラす際には飛んでいかないように、指で押さえておきましょう。バネ棒は小さい部品なので、もし飛んでいったら見つからなくなる可能性もあります。
革バンドの外し方【挿し込み口なし】
①作業中にバネ棒が飛び出して傷つけないよう、ラグにセロテープを貼ってマスキングしましょう。
②バネ棒外しの二股部分をラグの内側からそっと差し入れ、バネ棒の溝部分に押し当て、ラグに対して反対方向にズラしてください。
③バネ棒が内側の穴からはずれたら、飛び出しに注意しながらゆっくりとズラしてください。
④反対側のラグからバネ棒を外してください。
バネ棒外しの二股部分を、ラグと革バンドのスキマに入れ込んで外していきます。
デザインを変えたい目的でバンド交換するのなら、もともと付いているバンドは今後も使う可能性があります。その場合は、なるべくバネ棒外しをそっと差し込んで、傷付けないようにしましょう。片方が外れたら、あとはバンドをズラすだけでもう片方も外れます。
時計バンドの外し方【金属バンド】
金属バンドは様々なシーンで利用できて、水分にも強く汚れも落としやすいので使い勝手の良い素材です。しかし、コマの間に汗や汚れがたまりやすく、放置するとサビにつながります。革バンドと比べて交換する頻度は少ないですが、交換の必要がないわけではありません。
注意しなければいけないのが、「エンドピース」の存在です。エンドピースとは、バンドの先端にあるケースと接続する部品のことです。ケースとラグに密着している部品なので、着け外しが困難になります。
ムリして作業を続行すると、傷につながります。難しいと感じたら、中断して修理店などでプロに依頼するか、「両つかみ式バネ棒外し」で作業しましょう。
金属バンドの外し方
①バネ棒外しの二股部分を使います。裏側のバンドとケースの接続部にスキマが見えるので、そこにフィットするように差し込みます。
②バネ棒を押し込んだ状態のままラグと反対方向にズラすと、バンドを外すことができます。
③バンドからバネ棒を手で取り外してください。
挿し込み口がないため、使用するのは「二股」の一択です。裏側にスキマがある分、バネ棒の溝も確認しやすくなります。エンドピースとケースのすき間に汚れがたまりやすく、バネ棒と同様に普段のメンテナンスができません。バンドを外した際に、ケース側の汚れをクロスで拭き取ることをオススメします。
時計バンドの取り付け方
バンドの取り付け方は、素材に関わらず共通しています。挿し込み口の有無も関係ないので、外すのに比べてまだ楽に作業ができます。
取り付け方
①バネ棒をバンドに装着してください。
②腕時計が安定するように、リューズを上にしてください。
③ラグの下の穴にバネ棒を差し入れてください。
④二股の先端部でバネ棒を押し上げて固定しながら、ラグのもう片方の穴へ差し込んでください。
⑤両方の穴にセットできたら軽くバンドを動かして、固定されているかを確認しましょう。
重要なのは、最後にバンドを動かして固定されているかの確認です。もしこの作業をせずに固定されていなかったら、腕時計の装着時にバンドが外れてしまいます。そのまま地面に落下した衝撃で、ケースが破損したり内部にまで被害が及ぶ可能性もあります。
本来は不要な修理が発生する可能性があるので、固定されているかどうかの最終確認も必須であることを念頭に置きましょう。
時計バンドの交換を自分で出来ない場合の依頼先
バンドが専用ピンで止まっていたり、サビなどで固着して動かない場合は、無理せずプロに依頼するべきです。
ここでは、バンド交換が自分で出来なかった場合の依頼先について解説します。
メーカーの正規サービス
専用ピンが使用されている場合は、メーカーの正規サービスに依頼しましょう。バネ棒なら店頭で対応できますが、専用ピンはメーカーでないと手に入りません。専用ピンは、純正バンドのために作成されたものです。他のバンドの取り付けには対応していませんし、バネ棒での取り外しも出来ません。メーカーに依頼して、バンド交換の修理依頼で対応しましょう。
時計修理専門店
時計修理専門店には、スキルの高い修理技能士が在中しています。確実でスピーディーな対応が期待できるので、傷つけないか不安があるときは頼ってみましょう。バネ棒の固着なども、切断して新しいものに付け替えしてくれます。専用ピンでない限りは、時計修理専門店に依頼するのが安心です。
時計販売店
時計販売店でも、バンドの販売をしているところは、バンド交換を実施しています。店頭でバンド交換や、バネ棒の交換もしてくれます。取り扱いのあるメーカーなら、バンド交換の修理依頼も受付してくれるので、網羅的なサービスが可能です。
K’s factory(ケイズファクトリー)の宅配修理
K’s factory(ケイズファクトリー)では、時計専門店様から数多くの難しい依頼を受けてきた経験豊富な技術者が皆様のご愛用の腕時計を的確に診断・修理いたしております。また、ほぼ全ての修理工程を自社工房内で完結しており、厳重なセキュリティシステムで責任をもって皆様の大切な腕時計をお預かりしております。
内部(ムーブメント)のオーバーホールはもちろんのこと、外装部の点検・修理なども含めたトータル修理も賜っております。一部修理後のご相談やベルトの交換などのご依頼も対応しておりますので、ぜひK’s factory(ケイズファクトリー)の宅配修理をご活用ください!
まとめ
時計バンドの交換について、解説してきました。
バンド交換はオーバーホールと同様に、腕時計を所有していれば必ず発生する作業です。しかしオーバーホールと違って、専用の道具と手順さえ把握しておけば、そこまで難しくもないのです。自分で外し方から取り付けまでこなすことができれば、わざわざプロに依頼する必要もありません。
専用の道具やバンドは、全て通販で手に入ります。バンドを購入する際は、サイズと尾錠の色に気を付けてください。
外すときも付けるときも、傷つけないよう慎重に作業してください。ラグをセロテープでマスキングしておけば、ある程度は防ぐことができます。
もしバネ棒が固着していたり、専用ピンで止まっていた場合は、プロに依頼しましょう。
・メーカーの正規サービス
・時計修理専門店
・時計販売店
上記のいずれかに依頼すれば、解決してくれます。
腕時計のバンドは、思った以上に見た目に変化をもたらします。経年劣化による交換はもちろん、イメージチェンジとしてもバンド交換は有効です。自分で交換できるようになると、腕時計をより楽しむことにもつながりますので、ぜひ実践してみてください。