クォーツ式時計と機械式時計どちらを購入すればいい?【オーバーホールをメインに解説】

腕時計リューズ

新しい時計を購入するにあたって、今の時代はまずスマホから検索することが多いかもしれません。色んな時計を見ていると、「クォーツ式」と「機械式」といったワードが目に入ります。

しかし、それぞれが具体的にどんな仕組みで、どれくらい維持費用がかかって、どんなメリットとデメリットがあるのかは、販売サイトではわかりません。

「腕時計って『クォーツ式』と『機械式』があるみたいだけど、具体的にどう違うの?」
「『クォーツ式』と『機械式』、それぞれの購入するポイントは?」

この記事ではこれらの疑問を、時計とは切っても切り離せないメンテナンスである、「オーバーホール」をメインに解説していきます。

なぜ「オーバーホール」をメインに考えるのか?

時計の修理風景
時計の修理風景

クォーツ式と機械式を選ぶにあたって、「オーバーホール」まで視野に入れて考える必要があります。

腕時計を使用するにあたって、長期間が経過するとあらゆる部分が劣化していきます。放置すると故障につながりかねないので、メンテナンスする必要があるのです。

しかしながら、オーバーホールは一定の費用がかかります。腕時計を購入して、数年後にオーバーホールしようとしたら、予想以上の金額で戸惑ってしまったという声も耳にします。もしそのままオーバーホールをせずに放置し、故障につながり時計が使えなくなってしまうと、非常にもったいない話です。

車の車検と同じで、時計のオーバーホールは必須の維持費用です。時計を購入する前にオーバーホールに関する知識をしっかりとインプットして、時計選びをする必要があります。

オーバーホールの重要性

腕時計のオーバーホールとは、「時計の分解掃除」のことです。

オーバーホールをせずに使用し続けると、徐々に内部のパーツや油に劣化が進んでいきます。時刻のズレや機能不良など、使用するにあたって支障が出てきます。

時計の内部には、主に歯車の部分に潤滑油が使用されています。年月が経つと油が劣化し、「油切れ」という状態になったりします。この状態になると歯車の摩耗が大きくなる原因となります。歯車が摩耗することで時刻ズレが大きくなったり、最悪の場合はパーツの破損につながってしまいます。

他にも、金属同士の噛み合いで発生する微細なカスによって、ムーブメントに負荷が生じることもあります。

これらは、どんなに普段から丁寧に使用しても、防ぎようがありません。

オーバーホールは時計の現在の状態を正確に把握し、時計を故障から守り、新品に近い精度に戻すことで、いつまでも快適に使えるようにするための重要な作業なのです。

クォーツ式と機械式の違いとは?

時計の種類は大きく分けて「クォーツ式」と「機械式」に分かれます。ただ文字を見ただけでは、2つの違いを明確に理解することは難しいと思います。

「クォーツ式」は、現在の腕時計において主流となる機構です。コストがかからず大量生産が可能で、デザインや機能の幅広さも魅力です。

「機械式」は時計の元祖ともいえる機構で、数百年にわたって世界中の人に愛されています。駆動時間が約40時間で、毎日時刻ズレが発生しますが、手間がかかるぶん愛着が持てるタイプの時計と言えるでしょう。実際に、腕時計は機械式しか持たないという愛好家も数多くいます。

そんな「クォーツ式」と「機械式」の違いを、以下にまとめましたのでぜひ腕時計の選定の際には参考にしてください。

クォーツ式

クォーツ式は、1969年に日本の時計ブランドである「セイコー」から発売されました。

クォーツ式のムーブメントには、「水晶振動子」というパーツが使用されています。電池からの電圧を加えると、規則的に振動する水晶の特性を活かした、高い精度が特徴です。機械式は1日で数秒〜10数秒の誤差のところ、クォーツ式は1ヶ月で±20秒前後と非常に高い精度を実現出来ました。

それまで主流だった、機械式の腕時計をはるかに上回る精度とコストパフォーマンスで、一気に世界中を席巻しました。スイスブランドの売上が落ちてしまい、一部のブランドは廃業に追い込まれるなどの影響を受けました。

これは「クォーツショック」と呼ばれ、時計史に残る一大事件となっています。

機械式

機械式は非常に歴史が古く、諸説ありますが世界で最初に作られたのは1300年ごろの北イタリアと言われています。

ゼンマイがほどける際に生じる回転エネルギーを、内部のパーツでスピード調整をしながら歯車類へ伝えて針を動かす仕組みです。

動力源のゼンマイを回す機能は、2つあります。主流となっているのが、1920年代に開発された「自動巻き」です。機械内部の「ローター」というパーツが、時計を装着した際の腕の振りに合わせてゼンマイを巻き上げてくれる機能です。

もう1つは、自分でリューズを回してゼンマイを巻き上げる「手巻き式」です。その歴史は非常に古く、1700年代に開発された懐中時計が最初の手巻き式時計です。

機械式のムーブメントには数多くのパーツが使用されており、その精密な作りから芸術性の高い「工芸品」としての人気もあります。

スイス製の高級ブランドになると、数百万〜数千万円するモデルもあり、もはや住宅や高級車と同等の“ステイタス”となっています。

クォーツ式のオーバーホールについて

一般的にはオーバーホールといえば、機械式のイメージが強い傾向があると思います。

クォーツ式は電池交換を定期的にすれば良いのかというとそうではありません。

ここでは、そんなクォーツ式のオーバーホールについて解説していきます。

クォーツ式のオーバーホールは必要

クォーツ式時計も精密機械なので、オーバーホールは必要です。

機械式と同様に、クォーツ式も歯車で針を動かしています。長期間が経過すると、歯車の潤滑油が劣化したりその他の要因によって、時計の精度に悪影響を及ぼす可能性があります。その他、電池の消耗が早くなったり、時刻ズレの誤差が大きくなるなどの不具合に繋がる可能性があります。

電池交換の頻度は大体2年ほどですが、内部の劣化が進むと半年〜1年に短縮してしまいます。時刻ズレも、1ヵ月に1分近く送れるようになってしまったりと時刻を合わせる手間が増えてしまいます。

定期的なオーバーホールによってクォーツ本来の高機能を取り戻し、快適に使用を続けることができるのです。

クォーツ式のオーバーホールは自分でもできるのか?

クォーツ式のオーバーホールは、専門の技術者でないかぎり難しいと言って良いでしょう。

機械式にくらべてパーツも少なく、その分手間がかからないことは事実です。しかし、基本的にオーバーホールは、非常に高いスキルと知識に加えて専門の設備が必要になります。専門の資格を持った人間しか、手掛けることは出来ません。

もし自分で作業してしまうと、以下のような問題が発生する可能性があります。

・誤ってパーツを破損してしまう

・修理保証がつかない

・自分で作業したあとに修理専門店に依頼しても受けてくれない

オーバーホールは、非常に繊細な作業が求められます。慣れていない人では正常なパーツを破損する可能性がありますし、万が一うまくいったとしても修理の保証はつきません。

自分で作業した時計を修理専門店に依頼しても、受けてくれない可能性は非常に高くなります。

クォーツ式のオーバーホールは、プロに依頼して適切な処置をしてもらう必要があります。

K’s factory(ケイズファクトリー)の宅配修理

K’s factory(ケイズファクトリー)では、時計専門店様から数多くの難しい依頼を受けてきた経験豊富な技術者が皆様のご愛用の腕時計を的確に診断・修理いたしております。また、ほぼ全ての修理工程を自社工房内で完結しており、厳重なセキュリティシステムで責任をもって皆様の大切な腕時計をお預かりしております。

内部(ムーブメント)のオーバーホールはもちろんのこと、外装部の点検・修理なども含めたトータル修理も賜っております。一部修理後のご相談やベルトの交換などのご依頼も対応しておりますので、ぜひK’s factory(ケイズファクトリー)の宅配修理をご活用ください!

クォーツ式のオーバーホール【メリットとデメリット】

クォーツ式でもオーバーホールは必要ですが、メリットやデメリットはあります。

まずメリットとしては、維持費用が安いということが挙げられます。クォーツのムーブメントは、電池や水晶振動子などの動力源があるぶん手間がかかりません。作業が少なくなるので、修理料金も抑えられます。

逆にデメリットは、修理不可になる可能性があることです。クォーツ式のムーブメントには「電子回路」というパーツがあります。電圧を加えて水晶から発生した振動を、1秒ごとの電気信号に変換させる役割があり、クォーツ式の高精度を保つ核と言っても過言ではありません。

それぞれを、もう少し具体的に解説していきます。

維持費用が安い

機械式と比べて、クォーツ式のオーバーホールは維持費用が安く済みます。

時計の本体代で変動しますが、一般的には国産ブランドで5,000円〜で、海外ブランドで10,000円〜となっています。オーバーホールの頻度も、機械式は3〜4年ですが、クォーツ式は5〜6年と余裕があります。

クォーツ式は1万円以内の価格もあるので、そのようなものは買い替えてもいいでしょう。しかし、チタンなど質の高い外装や「ソーラー」「電波」などの機能がついたものは、値段が上がります。3〜4万円から、高いものだと10万円を超えるものもあるのです。高額なものに関しては、定期的にオーバーホールして長く使用することをオススメします。

修理不可になる可能性がある

クォーツ式は費用が抑えられるものの、メーカーの都合で修理不可になる可能性があります。

前述した電子回路には経年劣化による寿命があり、約5〜10年と言われています。交換すれば問題ありませんが、パーツの在庫次第になります。

修理の専用パーツには、保有期限というものがあります。腕時計が廃盤になってから、もしくは販売されてから7〜10年が期限なので、それを過ぎると修理の対象外となってしまいます。

数十年単位のロングセラー商品など、廃盤になりにくいモデルは長期間の保有が可能です。しかしほとんどのクォーツ時計は、いずれ電子回路が交換できないことが原因で、修理できなくなる可能性があります。

機械式時計のオーバーホール【メリットとデメリット】

ゼンマイで針を動かす機械式の時計は、電池交換できないぶんオーバーホールの重要度は増します。

機械式のメリットは、定期的なオーバーホールで長い期間の愛用が可能であることです。クォーツ式は、電子回路の保有期間が過ぎれば修理不可となります。機械式もパーツの在庫などに左右はされますが、基本的には定期的なオーバーホールによって長く愛用できる可能性の高いタイプになります。

デメリットとしては、維持費用が高いところです。具体的な金額は、国内メーカーで約10,000円〜、海外ブランドで約30,000円〜となっています。これらは最低金額で、時計のグレードや機能によっては、1回のオーバーホールで10万円以上かかるケースもあります。

それぞれをさらに掘り下げて、購入のポイントとなるよう解説していきます。

長期間の愛用が可能

定期的なオーバーホールをすることで、クォーツ式よりも長期間の愛用が可能です。

パーツ交換が必要になるときもありますが、部品の保有期間内であれば問題なく修理できます。例えば、スイスメイドでトップクラスの人気を誇る「ロレックス」は、海外ブランドで最長の25年間もの保有期間が設けられています。

そして下記のブランドでは永久保証も実施しており、ブランドが無くならない限り修理ができます。

・パテックフィリップ

・ヴァシュロンコンスタンタン

・オーデマピゲ

・ジャガールクルト

・IWC

何代にも継いで使用できる、まさに「一生もの」が約束された、最上級のアフターサービスです。

さらに機械式の場合は、保有期間が過ぎても修理専門店に依頼すれば、パーツを自作してくれるところもあります。クォーツの電子回路は専用パーツなので、こうはいきません。

メーカーのパーツ保有期間に、修理専門店の対応も加味すると、機械式はクォーツ式よりも長く愛用できるのです。

維持費用が高い

機械式のオーバーホールは、クォーツ式よりも維持費用が高くなります。

原因は作業工程の多さです。クォーツ式の部品は、約50個で構成されています。これが機械式になると、倍の約100個の部品数になるのです。これでもまだ少ない方で、ストップウォッチ付きのクロノグラフタイプになると、約150個のパーツで構成されます。オーバーホールの際は、それらを「分解」「洗浄」「注油」「調整」「組み立て」などの工程でメンテナンスをします。作業中にパーツの破損が見つかると、当然パーツ交換の作業もプラスされます。

そんなオーバーホールを3〜4年ごとに行う必要があるので、長期間の使用と引き換えに維持費用がかかるのです。

まとめ

腕時計を購入するポイントを、オーバーホールをメインに解説しました。

販売サイトやお店で選んでいる時は、時計のデザインや機能、予算の範囲内の料金かという部分に目がいきがちだと思います。しかしながら、長く愛用しようと考えた時、時計のメンテナンスであるオーバーホールを定期的に行う必要が出てきます。時計のブランド、種類によって修理料金も違ってきますので、時計の選定の際から念頭に入れておきましょう。

「クォーツ式」と「機械式」ではムーブメントの特性も、オーバーホールの内容も変わります。それぞれを理解したうえで、自分に合った腕時計を見つけて頂ければと思います。

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