腕時計のガラスの特徴と修理料金ガイド:各種ガラスの交換費用と修理期間を解説

愛用している腕時計を落としてしまったり、大事な人からもらった時計のガラスが割れてしまったり、傷ついたりした経験はありますでしょうか?そのような場合、修理できるか分からずに放置したり、処分してしまったという経験のある方も多いかもしれません。こうした腕時計のガラスに関するトラブルは、程度にもよりますが修理できる可能性は十分あります。

今回は、腕時計のガラス(風防)の種類、見分け方、修理料金、修理期間について解説していきたいと思います。

腕時計のガラス(風防)とは?

サファイアガラス-オメガ

腕時計のガラス(風防)の主な機能は、内部に塵などのゴミが入らないようにし、防水性を保つことです。時計の内部にはとても小さい金属部品が沢山あり、小さなゴミや、少量の塵・錆でも動作不良を起こすことがあります。最悪の場合、文字盤が変色したり、破損したガラスで文字盤にキズがついたり、中の機械が錆びてしまい修理不能な状態になってしまいます。

ガラスにはいくつかの種類があり、素材や加工方法によって防水性能や傷つきやすさが異なり、修理料金や期間も変わります。詳しく解説していきます。

腕時計のガラスの種類と修理料金

主な腕時計のガラスの種類と修理料金の目安が以下の3つになります。

  1. プラスチック風防:¥8,000~
  2. ミネラルガラス:¥20,000~
  3. サファイアガラス:¥20,000~

それぞれのガラスの特徴や見分け方、使用されている時計について詳しく解説していきます。

「プラスチック風防」

プラスチック風防-オメガ

プラスチック風防の特徴は以下の通りです。

  1. 昔の時計によく使われていた
  2. 傷つきやすい
  3. 安い

このプラスチック素材のアクリルガラス(風防)は、主に1980年までのアンティーク時計や、現在のスウォッチに多く使用されています。「風防」とは、ガラスのことです。計器類を風から保護する役割を持ったアクリルガラスのことで、「昔の時計を持っていてガラスで調べても出てこなかった」という場合、「風防」と調べると出てくることがあります。

プラスチック風防はミネラルガラスや、高強度のサファイアガラスと比べると傷が付きやすく、長く使っていると劣化してひび割れてくるというデメリットがあります。しかしプラスチックなのでガラスより粘性、弾力性が比較的高く割れにくいという特徴があります。

加工もしやすく市販の研磨剤(ポリッシュ)を使えば傷が取れるという利点もあります。ガラス自体が破損してもミネラルガラスやサファイアガラスより安価で破片も除去しやすく、修理費自体が安くなります。汎用品で合うものがあれば修理も交換も容易なガラスになります。

料金:

  • 研磨:¥3,000~
  • 交換:¥8,000~
  • 日数:1週間~3週間

◆素材の見分け方

見分け方ですが大きく二つあります。

  1. キズの特徴
  2. 感触

上述したように、プラスチック風防はミネラルガラスやサファイアガラスに比べて傷がつきやすいです。これらの傷は細かい線のようなものや、圧力や衝撃によって生じる割れとして現れます。割れは全体にひび割れるわけではなく、線状に割れることが一般的です。また、紫外線などによって劣化し、細かくひび割れた状態になることもあります。このような細かい傷がある場合はプラスチック風防であると判断できます。上の写真のプラスチック風防は劣化が進み、ひび割れや傷がひどい状態になっています。このような状態の風防は交換が必要となります。

感触については、ミネラルガラスやサファイアガラスはガラスですので硬く、爪で軽く叩くと「カン、カン」と硬い音がします。一方でプラスチック風防は爪で軽く叩くと「コッ、コッ」と若干軽い音がします。このようなガラスはプラスチック風防になります。力を入れて触ったり、爪で叩くとキズが入ったり割れたりするので注意してください。

◆主に使われている時計

  • スウォッチ
  • オメガ
  • アンティーク時計

安価なため、主にスウォッチに使われています。最近話題となったオメガ×スウォッチのムーンスウォッチにはプラスチック風防のガラスが採用されています。宇宙空間でガラスの破片が飛び散らないようにと採用されたムーンウォッチがその由来となっています。オメガのスピードマスタームーンウォッチプロフェッショナルは現在も強化プラスチック風防を採用しています。

1970年代位まで主にプラスチック風防が使われていたため、ロレックスのサブマリーナーやデイトジャストなど様々なモデルにも採用されています。国産のセイコー、シチズンや輸入のオメガ、IWCといったメーカーもほぼプラスチック風防でした。

昔の時計だからガラス交換できないというわけではなく、汎用性の高さから特殊な風防以外でしたら交換が可能です。

 「ミネラルガラス」

ミネラルガラス-アルマーニ

ミネラルガラスの特徴は以下の通りです。

  1. 10万円くらいまでの価格帯の時計に使用されている。
  2. 加工しやすい

ミネラルガラスは別名「無機ガラス」とも呼ばれています。広く一般的に使われているガラスです。

1970年頃からプラスチック風防→ミネラルガラスへの移行が始まりました。親世代から時計を引き継ぎ使用されている方は、このミネラルガラスが採用された時計の可能性が高いでしょう。ミネラルガラスは、サファイアガラスより傷つきやすく、割れやすいというデメリットがありますが、低コストで加工しやすいというメリットがあります。

多角のガラスや、ドーム状に加工したり、加工して強度を上げること(セイコーのハードレックス、シチズンのクリスタルガラス等)ができ、10万円くらいまでの価格帯の時計によく使われています。

プラスチック風防より加工はしにくいですが、目の細かい研磨剤ややすりを使用して、ごく小さい傷であれば修復が可能です。多少時間はかかりますが、基本的には交換対応可能です。

料金

  • 交換:¥20,000~
  • 日数:1週間~5週間

(メーカー取り寄せの場合時間がかかる可能性があります。また、古い時計の場合部品がない可能性があります。)

◆見分け方

プラスチック風防は比較的簡単に判別できます。一方、サファイアガラスはミネラルガラスと比べると光が反射し、文字盤が見にくくなることがありましたが、現在は無反射コーティングが施されたサファイアガラスも登場し、見分けが難しくなっています。

ただし、古いミネラルガラスには多角形のガラスがあり、それはほぼミネラルガラスです。また、長く使われた時計では、傷や欠けがあることで見分けがつくことがあります。サファイアガラスは傷がつきにくいのに対し、ミネラルガラスは傷がつきます。画像のように線が入っているものが、ミネラルガラスに付いた傷です。

◆主に使われている時計

  • セイコー
  • オリエント
  • シチズン
  • G-Shock

国産時計メーカーでも、高級機種にはサファイアガラスが使用されています。しかし、低価格帯のモデルではほとんどミネラルガラスが使われています。無加工のミネラルガラスは傷が目立ちますが、セイコーのようなメーカーでは、製造段階で特殊な加工を施したハードレックスが存在します。これにより、通常のミネラルガラスよりも強度が上がり、傷が付きにくくなっています。ハードレックスは通常のミネラルガラスよりも価格が高くなりますが、サファイアガラスよりは安価になる傾向があります。シチズンでも、同様に特殊処理が施されたミネラルガラスが用いられています。

このような特殊加工されたミネラルガラスはサファイアガラスに近い硬さになるためキズができた場合は基本的に研磨はせず、交換の対象になります。

基本的に割れたり、欠けた場合、目に見える程のキズがついてしまった場合は一般的に交換になります。

「サファイアガラス」

サファイアガラス-オメガ

サファイアガラスの特徴は以下の通りです。

  1. 高級時計メーカーはほぼサファイアガラス
  2. とても固く傷つきにくい
  3. 衝撃に弱い

サファイアガラスは高価で加工が難しいガラスですが、非常に硬く、簡単には傷がつかない特性を持ちます。サファイアと同等の硬さがあり、多くの高級時計メーカーで採用されています。さらに、サファイアガラスは光が反射する性質があるため、「無反射コーティング」と呼ばれる光の反射を抑えるコーティングが施された時計も存在します。

ただし、傷に対しては強いものの、衝撃には弱く欠けたりすることがあります(ミネラルガラスより衝撃には強く、欠けはありますが割れたりすることは稀です)。そのような場合は、すべて交換対象となります。交換費用は高額になりますが、落としたりぶつけたりしなければ、良い状態を維持できる優れたガラスです。

料金

  • 交換:¥20,000~
  • 日数:1週間~6週間

 (純正部品はメーカー取り寄せになりますので時間がかかる場合があります。)

◆見分け方

プラスチック風防、ミネラルガラスに当てはまらないガラスがサファイアガラスになります。

上述の通りサファイアガラスは加工が難しく、平らに加工されたガラスが多いです。しかし、技術が向上したため、近年ではドーム型、湾曲しているガラスなどが出てきています。

コーティングされているガラスも多くあり、一見するとサファイアガラスなのか、ミネラルガラスなのか判断できません。コーティングの種類も表面、表裏の両面、裏面のみと各メーカーごとにコーティングの種類が違います。

◆主に使われている時計

  • ロレックス
  • オメガ
  • セイコー
  • オリエント

国産メーカーも5〜10万円を越えるようなモデルからサファイアガラスが使われています。

オメガのスピードマスター57では内側にコーティング処理されたボックスサファイアガラス、皮膚と接触する裏蓋もサファイアガラスと両面サファイアガラスになっている時計もあります。

加工が難しいと述べましたが、ロレックスのようにグリーンサファイアガラスとさらに高強度、耐傷性と耐食性を上げガラス内部に王冠の透かしを入れたガラスも存在します。 割れたり欠けた場合は基本的には全て交換対象になります。さらにコーティング処理がされていたり、特殊な形状のガラスが存在しますので、そのようなサファイアガラスは専用になるためメーカー取り寄せ部品になります。

ガラスの交換と同時にオーバーホール(分解掃除)がオススメ

弊社では、基本的にガラスの交換と同時にオーバーホールをオススメしています。機械の種類(クォーツ、機械式)やストップウォッチ機能のある時計などによって金額が異なりますが、ガラスの破片や塵、ゴミが機械内部に入り込むことで、ガラス交換を行ったにもかかわらず時計が動かなくなる可能性があるためです。

また、ガラス部分のパッキンの劣化やガラスの隙間から雨水や手洗い時の水分が侵入し、これらの水分が文字盤の劣化や機械内部の錆びを引き起こすことがあります。下の写真は、水分により劣化した文字盤の例です。

文字盤のシミ-オメガ

最近、自分で時計のガラスを交換しようとする方が増えていますが、専用の工具がないと取り外せないガラスも多く存在します。ガラス交換ができたとしても、交換だけでは判別できない悪化している箇所があることもあります。そのような場合、一度時計を分解しないと問題箇所が分からないことがあります。無理に自分で挑戦するよりも、ガラス交換と同時にプロのオーバーホールを依頼することをお勧めします。

部品の交換が必要な場合や複雑機構の場合は料金と期間が変わる場合があります。 せっかくガラス交換をするのであれば、一緒にオーバーホールをすることをお勧めします。

まとめ

ガラスの役割や種類について説明してきました。時計にとってガラスは非常に重要な部品であり、大切な時計のメンテナンスはその寿命を延ばすために大変重要です。放置してしまうと、文字盤や内部の機械が劣化してしまう原因になります。

ガラスの状態が悪かったり、割れてしまっている時計がある場合は、修理して再び使用してみるのはいかがでしょうか?外装修理や防水テストも実施していますので、お気軽にご相談ください。

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